春が近づいてきましたね。
春の訪れを感じられる和菓子の代表の一つに「桜餅」があります。
「桜餅」と聞くと、どんな和菓子を思い浮かべますか?
全国的には2種類の桜餅が存在するそうです。
上写真の左側が「長命寺桜餅」で、右側が「道明寺桜餅」です。
小豆餡と塩漬けにした桜の葉で作られた和菓子という点においては共通なのですが、主な違いは包んでいる生地です。
一つは、水溶きした小麦粉をクレープ状に焼いた薄皮で小豆餡を包んだ「長命寺桜餅」と、もう一つは、餅米を粗めに潰した生地で小豆餡を包んだ「道明寺桜餅」です。
あなたはどっちの桜餅が好きですか?
長命寺桜餅の歴史
桜餅は江戸が発祥の地です。
和菓子の老舗「とらや」にある菓子資料によりますと、江戸時代の後期に隅田川の川岸に植えられた桜の葉を利用して売り出され、花見客の人気を集め全国に広がった、とあります。
徳川幕府第8代将軍・吉宗(在職1716-1745年)は、隅田川の両岸や飛鳥山などに桜の植樹を命じ、江戸を代表する花見の名所を作りました。
この隅田堤の近くの長命寺の門番が、桜の葉を集めて塩漬けにして、小豆餡の入った餅を包み、1717年に茶店で売り出しました。
これが桜餅の始まりです。
長命寺桜餅は、桜の名所という立地で大評判になりました。
この門番が、のちの山本屋の主人で、今も「長命寺桜もち」の老舗として有名です。

桜餅は、江戸時代後期に隅田川名物として広まり、その後、関西にも伝わっていきます。
道明寺桜餅の歴史
江戸で流行した桜餅は、各地で真似して作られるようになりましたが、どこでも同じではなく、次第に関西は「道明寺粉」を用いた生地が主流になったようです。
道明寺粉とは、もち米を水につけて蒸してから乾燥させた後、粗く挽いたものです。
これは、大阪府藤井寺市にある道明寺で保存食として作られた糒(ほしいい)が有名だったことから、この名がつきました。
「糒」という漢字は難しい字ですが、「米」と「備える」が合体した字なので覚えやすい感じですね。

道明寺桜餅の始まりは、1897年頃、京都の奥村又兵衛という人物が「嵯峨名物桜餅」として発売されました。
嵯峨には桜の名所の嵐山があり、江戸の隅田川と同じく、お花見には桜餅が好まれたと思われます。

全国各地で主流な桜餅はどっち?
全国的に、桜餅には「長命寺」と「道明寺」の2種類が存在することが分かりましたね。
では、各都道府県ではどちらが親しまれているのでしょうか?
その結果が以下の通りです。

関東は長命寺が主流ですが、道明寺も親しまれているようです。
一方、関西や九州などは道明寺が主流のようで、全国的には約54%を占めていました。
ちなみに、私は道明寺派です。
東京の和菓子老舗 とらや
とらやでは長命寺と道明寺の両方が食べられます。
とらやは、室町時代に京都で創業し、天皇に和菓子を献上して以降、皇室御用達の製菓業となりました。
これまで約500年の歴史を持ちますが、明治時代に京都から東京に移りました。
特に、「とらやの羊羹」として、広くその名を知られていますね。
赤坂御所の向かいに店を構える「赤坂店」では、なんと、長命寺桜餅と道明寺桜餅の両方が購入できます。
電話で問い合わせてみましたが、両方の桜餅を買いたい方は日にちに注意です。
販売期間(予定)
長命寺桜餅:2023年2月25日(土)から4月10日(月)まで
道明寺桜餅:2023年3月25日(土)から4月20日(木)まで
つまり、両方の桜餅を買いたい方は、 2023年3月25日(土)から4月10日(月)までの17日間がチャンスです!

京都の和菓子老舗 鳴海餅本店
鳴海餅本店では、道明寺桜餅が食べられます。
鳴海餅本店は1875年に創業し、今年で145周年を迎えます。
鳴海よね氏が娘三人と共に三間間口の小さなお店を開いたのが鳴海餅の始まり出そうです。
現在は、京都の歳時記に合わせて厳選した素材を使用した和菓子が人気のお店になっており、店内にはイートインスペースがあり、その場で買ったものを食べたり、お菓子を注文したりできます。

まとめ
いかがでしたか?
桜餅は、長命寺も道明寺も桜色の色粉が使われることが多く、美しい桜色であり、桜の葉っぱの香りも特徴的です。
全国各地に、桜餅を名物にしているお店も多く存在しています。
また「桜餅」は春の季語として詠まれることもありますので、桜餅が売られる季節になると、本格的な春の訪れを感じますね。