いちごは世界各国で食べられていますが、「生」で食される消費量としては、日本が世界一です。
海外ではいちごの酸味と硬い食感の特徴を活かして、主にジャムやお菓子の材料として利用されることが多いですが、日本のいちごは酸味が少なく、大粒で甘みが強く、ジューシーな食感から、「生」で食べられることが殆どです。
また、日本のいちごは品種も約300種と大変多く、世界全体の品種の半分以上が日本のものだ、という説もあります。
今回は、日本が誇る甘くてジューシーないちごについて、歴史や甘さの秘訣、代表的な品種や新品種、いちご狩り情報などを紹介します。
日本でいちごが食べられるようになったのは

日本でいちごが食べられるようになったのは、江戸時代末期の1830年代と言われています。
いちごはオランダ船によって持ち込まれたもので、当時は「オランダイチゴ」と呼ばれていたそうです。
その後、明治時代に農業が近代化されるにつれて、欧米からさまざまな種苗が導入されるようになり、1900年頃には外国品種を使った栽培が広がりました。
いちごは春が旬な野菜?!
1960年代まで、ビニールハウスなどの施設を使わずに、屋外で栽培されるいちごが主流だったため、収穫時期は4~6月頃で、当時は「いちごの旬は春~初夏」というが一般的でした。
俳句の世界でも、「いちご」は夏の季語とされています。
その後、いちごの需要が爆発的に増えるクリスマスにあわせて、品質の高いいちごを冬の時期から収穫できるように、ハウスなどで人工的に春の環境をつくる技術が発達してきました。

ハウス内の温度や湿度の管理、最適な日照時間や水量の調整、大粒でジューシーないちごに育てるための手作業による受粉など、さまざまな工夫がなされてきました。
その結果、現代においては、「いちごの旬は冬~初夏」と言えるほど、長い期間美味しいいちごが食べられるようになっています。
このように日本のいちごは温室で栽培され、丁寧に手入れされた後、手作業で収穫されるなど、品質が保証されており、高く評価されています。
いちごは果物ではなく野菜です。
農林水産省の作物の統計調査においても、いちごは果物ではなく野菜に分類されています。
しかし、実際は果物と同じように食べられていることから「果実的野菜」とも呼ばれています。
いちごの全国生産地ラインキング TOP10
いちご栽培技術の進歩に伴い、多くの都道府県で収穫されるようになりました。
2020年度の全国のいちごの収穫量は15.9万トンでした。
収穫量ランキングは以下の通りです(横スクロールできます)
順位 | 都道府県 | 生産量 | シェア | 作付面積 |
1 | 栃木 | 22,700t | 14.3% | 518ha |
2 | 福岡 | 16,400t | 10.3% | 435ha |
3 | 熊本 | 12,200t | 7.7% | 305ha |
4 | 静岡 | 10,400t | 6.5% | 292ha |
5 | 長崎 | 10,500t | 6.6% | 268ha |
6 | 愛知 | 10,400t | 6.5% | 260ha |
7 | 茨城 | 8,790t | 5.5% | 235ha |
8 | 佐賀 | 7,560t | 4.8% | 175ha |
9 | 千葉 | 6,320t | 4.0% | 215ha |
10 | 宮城 | 4,640t | 2.9% | 131ha |

過去データにおいても、上位3県は不動で、1位は栃木、2位は福岡、3位は熊本です。
4位と5位は年度によって、長崎と静岡が取り合う状況で、この5県で全国の収穫量の約半分を占めています。
いちご王国 とちぎのいちご

栃木県は、県央部から南部に肥沃な関東平野が広がり、日光や那須を源とするきれいな水が流れる自然豊かな土地です。そんな風土に加え、冬の日照時間が長く、昼と夜の寒暖差が大きいという気候特色は、いちごの栽培に適しています。
太陽の光を最大限に利用したビニールハウス栽培で、低めの温度を保ちながらゆっくり成熟させることで、甘くて美味しいいちごが作られています。
栃木県は1968年からいちごの生産量日本一を誇り、2017年に50年連続日本一となり、現在も不動の地位を確立し続けています。
栃木県のブランド価値向上と県産いちごの更なる発展を図るため、毎年1月15日を「いちご王国・栃木の日」に設定しました。
代表的ないちご品種 5選
日本を代表する、大粒で甘くてジューシーな生産量の多い品種を5つ厳選します。
とちおとめ(栃木)

いちご生産量日本一の座を半世紀以上保ち続けている栃木県が誇る国内取扱いシェアNo.1の品種です。
安定した美味しさが評判で、栃木県のみならず全国各地で栽培されています。
近年流行している大粒品種に比べるとやや小ぶりですが、甘味と酸味のバランスが絶妙で、口に入れるとジューシーな果汁が溢れ出します。
果実がしっかりしていて比較的日持ちするのも、長年愛され続けている理由です。
あまおう(福岡)

あまおうは、「あまい」「まるい」「おおきい」「うまい」の頭文字をとって名付けられた福岡県のオリジナルな品種です。
1粒のボリュームが一般的ないちごの約2倍あり、「世界最重量のいちご」としてギネス世界記録に認定されていることからも、その大粒ぶりが特徴です。
可愛らしい丸いフォルムや濃厚な味も人気の秘密です。
ゆうべに(熊本)

2015年に誕生してから熊本県内でグングン生産を伸ばしている注目品種です。
熊本の「熊」の音読み「ゆう」と、いちごの紅色から「べに」を取って名付けられました。
親品種の「かおり野」から受け継がれた、品のある芳醇な香りが「ゆうべに」の魅力です。
見た目も美しく、一口かじるとみずみずしい果汁が口の中いっぱいに広がります。
酸味はやや控えめで、その分甘さが引き立ついちごです。
紅ほっぺ(静岡)

紅ほっぺは、静岡県のオリジナル品種です。
果皮だけでなく果肉の中も鮮やかな紅色に染まることと、ほっぺが落ちるほど美味しいことにちなんで付けられた名前です。
リッチな甘味にほどよい酸味が加わって、味にコクがあるのが特徴です。
いちご本来の甘酸っぱさを味わうことができるだけでなく、大きめで1粒の満足度が高いので、根強いファンも多い逸品です。
ゆめのか(長崎)

もともとは愛知県で開発された品種ですが、現在は、 「さちのか」に代わる後継品種として、長崎県でも広く生産されており、長崎県の主力な品種となっています。
キレイな円すい形のシルエットが魅力で、絵に描いたようなバランスの良い形は、ケーキなどに乗せたときの見栄えも最高です。
甘味がすっきりしていて後味もさわやかなので、何個でも口に運びたくなります。
「みんなの夢が叶うように」との願いをこめて名付けられましたので、受験シーズンにも人気の品種です。
新品種の高級いちご 5選
現在も日本各地で品種改良が重ねられ、個性的な新品種も続々と誕生していますので、ここでは新品種の高級いちごを5つ紹介します。
スカイベリー(栃木)

スカイベリーは、栃木県のみで栽培が許可されている高級いちごです。
大きい、美しい、美味しい三ツ星いちごで、ジューシーで上質な味わいです。
自分へのごほうびや、大切な人への贈りものにぴったりな“ハレの日”いちごです。
出荷先が東京・横浜・仙台・盛岡の4つの市場に限定されており、手に入りにくいことから希少価値の高い品種です。
スカイベリーの最大の特徴はその大きさで、通常のいちごが20g程度なのに対し、25g以上の大粒で、美しい円錐形をしています。
ジューシーで甘みと酸味のバランスが良く、食べやすいまろやかな味わいのいちごです。
やよいひめ(群馬)

やよいひめは、群馬県が育成した「とねほっぺ」と、栃木県が育成した「とちおとめ」をかけ合わせてできた、群馬県のオリジナル品種です。
他のいちごにはない上品な橙赤色と、大粒でしっかりとした果肉、甘さと酸味のバランスに優れた食味が特徴です。
また、その名のとおり、他品種の品質が低下しやすい「3 月(弥生)」以降も安定した品質を保てることも大きなセールスポイントです。
美人姫(岐阜)

美人姫とは、岐阜県のいちごの品種「濃姫」と、ある品種を掛け合わせて2009年に開発されたいちごです。
美人姫は大きさ、甘さ、色、ツヤ、形の5拍子そろった奇跡のいちごと言われ、都内の百貨店では一粒1000円から販売されています。
通常のいちごの平均サイズが20gなのに対して、美人姫の平均サイズは40gと、2倍以上もあります。
なんと、大きいものは100g以上にもなります。
大きないちごは、大味なイメージがありますが、美人姫は甘み・旨みがしっかりのっており、一般的ないちごの糖度は10度程度ですが、美人姫の糖度は13~16度もあります。
古都華(奈良)

古都華(ことか)は奈良県のオリジナル品種のいちごです。
奈良県には「あすかルビー」というオリジナル品種がありますが、古都華はあすかルビーから10年の時を経て誕生した新品種です。
通常のいちごより1粒の大きさが大きめなのが特徴で、大粒のものは5Lサイズまであります。
また、古都華の糖度は15度と平均よりも5度程度高く、甘くて芳醇な香りに、しっかりとした歯ごたえがあります。
形もとてもきれいで、切り口も甘く美しく、今後人気な高級いちごのひとつになるでしょう。
天使の実(佐賀)

天使の実は、佐賀県唐津市にあるたった5つの農園でしか生産されておらず、その希少価値の高さから「幻のいちご」とも呼ばれています。
果皮が桃色がかった白色で、一粒が平均60gもある大粒の高級いちごです。
天使の実は、遺伝子的な理由で光が当たってもアントシアニンが合成されにくいことから、白いいちごになります。
天使の実は、白い見た目だけでなく味も特徴的で、甘みと酸味のバランスが良く、いちごなのにメロンのような風味があります。
多数のメディアで紹介されているいちご狩りスポット

1年を通じていちごや桃などの果物狩りや各種イベントが楽しめ、多数のメディアでも紹介されているのがスローライフリゾートいちごの里です。
住所:栃木県小山市大川島408
いちご狩りには毎年10万人が訪れる観光農園です。
季節によって、いちごやさくらんぼ、ぶどう、ブルーベリー、ももなどのフルーツ狩りや、ケーキ&ジャム作り体験教室、収穫体験などが楽しめます。
また、直売ショップ・レストラン・カフェ施設も併設しています。
いちご狩りは完全予約制です。
生育状況により当日受付できない事もあるようですので、事前にお問い合わせください。
お問い合わせ先:0285-33-1070(9:00〜17:00)
スローライフリゾートいちごの里では、高級いちごのスカイベリーやとちあいかも40分摘みとり食べ放題が可能ですが、食べ比べはできませんので、ご注意ください。
〜4月9日(日)の料金(横スクロールできます)
小学生〜大人 |
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平日 | 現地払い (現金のみ) |
2,200円 |
事前決済 (クレジットカード) |
1,980円 | |
土日祝日 | 現地払い (現金のみ) |
2,310円 |
事前決済 (クレジットカード) |
2,080円 |
4月10日(月)〜5月7日(日)の料金(横スクロールできます)
小学生〜大人 |
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平日 | 現地払い (現金のみ) |
1,650円 |
事前決済 (クレジットカード) |
1,490円 | |
土日祝日 | 現地払い (現金のみ) |
1,760円 |
事前決済 (クレジットカード) |
1,540円 |
詳細はスローライフリゾートいちごの里の公式HPをチェックしてください。
まとめ
いかがでしたか?
日本のいちごは子供から大人まで大人気です。
日本のいちごは栽培技術の進歩や長年の品種改良によって、他の国のいちごにはない「大きさ」「甘さ」「色」「ツヤ」「形」の5つの優れた特徴を持ち、日本国内はもちろんのこと、海外でも人気が高く、輸出も増加傾向にあります。
現在も日本各地で品種改良が重ねられ、個性的な新品種も続々と誕生しています。
栄養面においても、いちごはビタミンCが豊富で、みかんやグレープフルーツの約2倍も含まれています。
ビタミンB群である葉酸も多く含まれています。
また、ポリフェノールの一種であるアントシアニンも豊富で、目の働きを高めたり、眼精疲労を予防したりする効果も期待できます。
古来、いちごは屋外で栽培されいたため、旬は春〜初夏でしたが、ビニールハウス栽培が主流となった現代においては、12月〜5月頃まで収穫されています。
いちご狩りはゴールデンウィーク頃まで提供しているファームが多いので、今からお出掛けの計画を立ててみてはいかがでしょうか?